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― しっかり解説 ―

セキュリティポリス(SP)とは
セキュリティポリス(SP)とは、政府や外国の要人などの警護を専門とする、警視庁警備部警護課の警察官です。
稀に民間警備のボディーガードをSPと呼ぶこともあります。
日本のセキュリティポリス(SP)は、1975年に内閣総理大臣三木武夫が大日本愛国党の党員に殴られ負傷した事件がきっかけで創設されました。それまでの警護はできるだけ目立たないように要人に寄り添う形でしたが、この事件以降、セキュリティポリス(SP)はその存在を明らかにして襲撃の抑止を図るものとなりました。
また、セキュリティポリス(SP)はアメリカのシークレットサービスを参考に訓練され、その略称「SP」はシークレットサービスの略称「SS」に倣ったとされています。
シークレットサービス(SS)とセキュリティポリス(SP)の違い
アメリカ合衆国大統領の警護を行う執行機関にアメリカ合衆国シークレットサービスがあります。
アメリカのシークレットサービスは大統領の家族も含めて警護するよう規定されていますが、日本の場合は内閣総理大臣の家族は警護対象者ではなく、セキュリティポリスは総理大臣を警護しても通常はその家族までは警護しないことになっています。
セキュリティポリス(SP)の仕事
多くの場合、複数人でチームを組み、連絡を取り合いながら、要人が自宅を出てから帰宅するまでの間、身辺を警護します。
要人のいる車内、室内、建物内の全てにおいて安全の確保に努めます。
また、セキュリティポリス(SP)が組むチームの中には、必ず1人、犯人と最後まで戦う任務を受けたSPがいて、その間に他のSPが要人を避難させる形をとるようになっています。
なお、セキュリティポリス(SP)は、身辺警護が専門職務であり、犯罪捜査・地域警戒・交通取締などはその職務外となっています。
警護対象について
法律により「内閣総理大臣、国賓その他身辺に危害が及ぶことが、国の公安に係ることとなるおそれがある者として警察庁長官が定める者」と定められています。
具体的な警備対象
内閣総理大臣、衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官の三権の長、衆議院副議長、参議院副議長、国務大臣、総理大臣経験者、与野党党首、与党(現在は自由民主党)の幹事長、政務調査会長、総務会長、参議院議員会長、参議院幹事長、主要国駐日大使、地方公共団体の首長
政府や外国の要人を警護する部署は第1から第4係まであり、それぞれの係で警護する対象が異なります。
第1係:警護対象は総理大臣
第2係:衆参両院議長・副議長、最高裁長官および国務大臣
第3係:国賓や海外からの外交使節団
第4係:その他政府要人
なお、天皇皇后両陛下などは、警衛課が警護を担当しています。
また、原則として、一般の国会議員に対しSPが警護にあたることはなく、それぞれの国会議員は警備会社のボディーガードを個別に依頼しています。
セキュリティポリス(SP)の武器
・拳銃
・特殊警棒
・防刃衣
・携帯用無線機
・マグライト
を常に装備しています。
また、セキュリティポリス(SP)が携行するブリーフケース、ガーメントバッグ、薄い手さげカバンの中には、防具として折り畳み式の防弾盾が仕込まれており、被襲撃時には警護対象者の周りで盾を広げ、銃弾から守るとされています。
民間のボディーガードの場合
民間のボディーガードは、会社役員、政治家、国内外のアーティスト、著名人など警護対象の範囲が広いのが特徴です。彼らの身辺の安全を確保し、誘拐、暗殺などの脅威から守ります。なお、日本では、民間のボディーガードの身分は警備員であって、現行犯でない逮捕や身体捜検及び職務質問といった一切の法的特権を有していません。また、警護の方法にも警備業法により様々な制約があります。
例えば、所持できる道具は、都道府県公安委員会の認可を受けた特殊警棒やフラッシュライト、刺又等、非殺傷性の防犯用品に限定されています。そのため、不審者や危険人物などに対しては、己の身を挺して守ることになります。

セキュリティポリス(SP)になるには
警察組織内でSPになるには、警視庁の実施する警察官採用試験を受けて合格しなければなりません。
警察官としてのキャリアを歩んでいくなかで、上司からSPの適性があると認められると、「SP候補者」として推薦を受けることができます。
SP候補者になるには、業務成績が優秀であることに加えて、条件を満たすことが必要になるので非常に狭き門となっています。
警察官採用試験を受ける条件
・年齢:17歳~30歳前後
・身長:男性160cm以上、女性154cm以上
・体重:男性48kg以上、女性45kg以上
・視力:裸眼視力両眼0.6以上、または裸眼視力0.1以上かつ矯正視力1.0以上
・その他:色覚、聴覚、疾患、運動機能が職務執行に支障のないこと
・高卒以上の資格を持っていること
SP候補者になる条件
・男性:身長173cm以上、女性:身長160cm以上
・柔道3段以上または剣道3段以上
・けん銃操作上級の資格取得
※高度な射撃能力や高い英語力が選考に有利な場合もある
SP候補者に選ばれた警察官は、警察学校に集められて3カ月の特殊な訓練を受け、身体能力や技能などをテストされます。
そして、候補者同士の厳しい競争を勝ち抜いた一部の人だけが、警視庁警備部に異動となり、SPに任命されます。
民間でSPとして働くには、個人に対する警護サービスを行っている警備会社などに就職する必要があります。
企業によって採用条件はさまざまで、求められるスキルのレベルも異なります。
柔道や剣道などの段位を持っていたり、あるいはボクシングなどの格闘技経験があると採用に多少有利になるのではないでしょうか。
また、民間警備会社には、元警察官や元自衛隊員など、実務経験の豊富な人材も数多く在籍しています。
なお、武術や護身術などの講義を行っているSP養成のための専門学校もあるので、学校に通って一通りのスキルを身につけてから、警備会社などに就職するという方法も考えられます。
レーガン大統領暗殺未遂事件
今回の記事は、日本の要人を警護するSPについて書いていますが、アメリカのシークレットサービス(SS)が護衛すると言えば合衆国大統領です。自由の国アメリカの象徴でもありますが、実は、これまでに4人の大統領が暗殺されています。
エイブラハム・リンカーン、ジェームズ・ガーフィールド、ウィリアム・マッキンリー、ジョン・F・ケネディです。
暗殺未遂ではあったけれども、現役の合衆国大統領に銃弾が命中した事件としては、1981年3月に起きたロナルド・レーガン大統領暗殺未遂事件があります。
この事件は、ワシントンD.C.で講演を終えたレーガン大統領が大統領専用車へと向かおうとした際に銃撃を受けたものです。
犯人(ヒンクリー)が放った銃弾は専用車の車体に当たって跳ね返りレーガンの左胸部に命中し、他にも大統領報道官と警察官、そして、シークレットサービスに命中しました。犯人ヒンクリーはその場でシークレットサービスや警官に取り押さえられましたが、この10秒に満たない一連の出来事は複数のテレビカメラによってその一部始終が生中継されていて、この事件を世界中の人が目撃することになりました。
銃撃直後にレーガン大統領は無傷と思われていたのですが、大統領専用車内でレーガンが吐血し併せて胸部に出血を認めたために、シークレットサービスの機転により大統領専用車は近隣の大学病院に急行したことで一命をとりとめました。
事件の知らせを受け病院に直行した妻のナンシーに対しレーガン大統領は「ハニー、僕は避けるのを忘れていたよ(Honey, I forgot to duck)」と冗談を言ったそうです。
レーガン大統領のこのようなユーモアは事件後に公にされ、「危機の際にもユーモアを忘れない」という、指導者のあるべき姿を体現したものとして称賛の対象となったそうです。
また、後にレーガン大統領は共和党大会での演説中に、飾りつけの風船が破裂し周囲が銃撃があったのかと勘違いし騒然とすると「奴(ヒンクリー)は、またしくじったようだ!」とジョークを飛ばし、聴衆を大いに沸かせたそうです。

PyiQ
人のために行動出来る人や正義感が強い人が向いていると思います。また、危機管理能力や瞬時の判断力も求められます。
PyiQ
警察にしろ民間にしろ柔道や剣道などの術は出来るようになった方がいいと思います。特に民間の場合は、柔道や剣道などの有段者、あるいはボクシングなどの格闘技経験者など、武術に長けている人が採用される可能性が大きいようです。
PyiQ
女性の要人を警護するため、少数ですが女性のSPもいます。女性SPの割合はおよそ5%ぐらいです。